高血圧は、「silent killer、静かなる殺人者」と言われるように、血圧が上昇してもたいていは自覚症状がありません。ではなぜ高血圧状態が持続すると良くないのでしょうか?
これには、高血圧による
①心臓の仕事量への影響
②血管壁への影響
を分けて考えるとわかりやすいと思います。
①心臓の仕事量は、血圧×脈拍で決まります。つまり血圧が高ければ高いほど、心臓の仕事量(酸素消費量)は増大します。有限器官(永久器官でない!)である心臓の寿命が、高血圧状態が長く続くことで、逆に短くなることは想像に難くないと思います。
②高い圧力で、血液が血管内を流れる状況では、血管の壁にも相当の圧負荷がかかり続けます。さらに高い圧力に耐えるために血管壁はさらに厚みを増し、内腔が狭くなり、隅々の血の巡りが悪くなります。そこで心臓は、そのポンプ機能を高め、より力強く血液を全身に送り出そうとして、さらに血圧が上がるという悪循環を形成します。
ここで一言・・・粥状(じゅくじょう)動脈硬化の成り立ち
血管の曲がり角や分岐点などでは、高血圧状態が持続することで、血液が血管の壁面に強く当たり、機械的な内膜傷害が起こりやすく、それが自然修復されないと血液中の悪玉コレステロールなどが浸み込んでいくことになります。ちょうど手足の傷口が化膿してしまう状態を想像して頂くとわかりやすいかもしれません。これが粥状動脈硬化性病変です。その表面には血栓(かさぶたのような血の固まり)が付着し、その一部が血液の流れに沿って剥がれ飛んでいくと、恐ろしい病気である脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。こういった血管壁が痛まないようにするためにも、血圧値はできるだけ適正化させる必要があるのです。実際、上の血圧を10-20mmHg下げるか、あるいは下の血圧を5-10mmHg下げることで、脳卒中は30-40%、心筋梗塞は15-20%発症リスクを下げることがわかっており、脳心血管事故全体では発症リスクを半減させることができるといわれています。